廃蛍光灯リサイクルの現場を、訪問しました【後編】

溶解したガラスカレットを型枠に入れる。
▲溶解したガラスカレットを型枠に入れる。

お話を伺った人:田口貴将さん(株式会社サワヤ リサイクル工房スタジオリライト部長)
聞き手:高倉鼓子、高倉草児(ガイアみなまた職員)

20年春、通信ガイアから61号で国際水銀ラボの赤木洋勝先生と対面。その際、赤木先生の開発された水銀除去システムを応用して、廃蛍光灯からリサイクルガラスを作る会社が金沢にあるとお聞きした。「是非行ってみてください」と背中を押されて、我々はこの夏、実際に株式会社サワヤを訪問。本記事は、そのときに行わせていただいたインタビューの記録である。お忙しい中を取材に対して快くご対応くださったサワヤの皆様に、この場を借りて御礼申し上げます。

>>赤木洋勝先生との対面記事はこちら

>>インタビュー前半戦はこちらから

(サワヤのリサイクル工房スタジオリライトにて、工房内を案内していただきながら ※以下敬称略)

田口:うちは原料として廃材をメインに使っています、というところです。だからといって、この手法でしか作れませんっていうスタンスではない。お客様のほとんどがデザイナーであったり設計事務所なので、その方々がデザインしたものを、どういう方法を使えばそれができるかというところから一緒に考えます。既製品にとらわれることなく、オーダーメイドをメインにしているので、結構設計事務所の方からのニーズに応えることができる。やっぱりデザイナーの方々っていうのは自分の個性も出したい、だからそこいらでみんなが使っているものはあまり使いたくない、という方々もおられますので。その辺りは、なにぶん単価に跳ね返ってくるものなんですけれども、そこは一つ、デザインに伴うものとして認知してもらっています。
(隣で行われている作業を指して)これはこれでまた、乾かしてもう一回原料として使うことができます。単に廃材のガラスを使っています、であればそれはそれでいいんでしょうけれども、それを使ってまたさらに再生が可能だというところまで提案できるっていうのは、僕らの強みです。この作業、もうあと5、6回やったらもうお湯がボコボコになりますよ。

ガラスの温度を下げる
▲熱されたガラスの温度を下げる作業。湯気が上がり、見た目にも大変熱そう。

草児:地獄のようだ……。

田口:夏場は本当に大変な作業ではあります。その辺りはもちろん、会社として安全対策をして行っています。

草児:技術でしょうから、何年間かは修業を、みたいなこともあったりするんですか?

田口:そうですね。入って一日や二日でできることではないので(笑)。まあ温度が温度ですから、その温度に対してまず気持ち的に逃げてしまうと、余計に危ない。

草児:働かれる方は「やりたいです!」みたいな感じで入って来られるんですか?

田口:そうですね。基本的に工芸の学校だとかでワンクッション経験値を上げてから、うちに来られたりですとか。といっても学校で勉強したからといって、実戦で使えるわけではないですけれども。何の仕事でもそうだと思いますが、自分はこの仕事が好きだっていう気持ちがないと、やっぱり続かないですし。

草児:そうですね。

田口:こんなクソ暑い中で汗水たらして働こうということを、選択するっていうところなので。

草児:貴重な人材です。

鼓子:熱意がないと。

田口:そこで、もうちょっと給料上がってほしいなっていうのを……麻生さんにアピール(笑)。

鼓子:チラッと見ましたね(笑)。

草児:そういうのを、面と向かって言い合える関係なんですね。素晴らしい(笑)。

窯の口と扇風機
▲窯の口からは、赤々とした内部が見える。少し離れたところで、業務用扇風機が力の限りに回る。

田口:こういった作業も、窯の蓋を開けているので中の熱が放熱される。放熱すれば温度が下がる。温度が下がればガラスが固まる。だから急がなければいけません。

鼓子:すごいですね。

田口:今日溶かしていたのは FL と言いまして、さっきまでは蛍光灯のガラスを溶かしてたんですけれども、明日から蛍光灯ではなくてブラウン管のガラスを溶かす予定になっています。なので、窯をブラウン管のガラスになじませてあげる作業を、今やっています。というのも、ブラウン管のガラスと蛍光灯のガラスとではガラスの成分が違って、色も違います。今、窯の中で蛍光灯のガラスがべっとりくっついているような状態なので、そこに細いブラウン管のガラスをまぶして、さらに熱をかけて蛍光灯のガラスを押し込んで、そのパーセンテージをだんだん上げていく。

草児:コンタミを減らすんですね。

田口:そうです。そうでないと、混ざってしまうんです。色も全然違います。

草児:それぞれ向いている製法があるのでしょうか?どちらも汎用は……。

田口:どちらも汎用が可能です。厳密に言えば、蛍光灯とブラウン管のガラスを比べたら、蛍光灯の方が溶けやすいですし扱いやすいというのがあるんですけれども。まあでもそんなに……実際溶かす温度にしても、ガラスで言えば粘り気が違うので、そういった意味で蛍光灯の方がまだ扱いやすいですね。でももっと言ってしまうと純粋なガラスの方が、完全に作られたガラスなので、溶かしやすかったり扱いやすくなってはいるんですよ。とは言え、うちはリサイクルガラス工房というところに重きを置いているので。

草児:熱そう……。

田口:メチャメチャ熱いですよ。炎の火傷って、その瞬間は熱いし痛いんですけど、水蒸気の火傷の方が僕らは怖いんです。治るまでに時間がかかる。

草児:複雑に傷ついてしまうんですね。

鼓子:瓶のリサイクルと蛍光管のリサイクルとを比べると、やはり蛍光管の方が手間がかかるような気がしますけれど。

田口:それはもう、リサイクルする工程になってくるので。ただガラスの瓶ですと、瓶を作っているメーカーさんというのは蛍光灯メーカーよりも多いですし、瓶自体も色がたくさんあるわけじゃないですか。そういった意味では、瓶の仕分けの方が大変だと思いますよ。もちろん中身の洗浄もしなきゃいけないですし。ラベルも外さなきゃいけない。その辺は蛍光灯も一緒ですけどね。中の水銀や発光パウダーを抜かないといけないので。
なのでまあ、瓶のリサイクル業者さんは全国にもたくさんあると思いますけど、その破砕されたものをリサイクルするってなると、路盤材に入れて滑り止めにするとかっていうことの方がメインになりますね。それをまた溶かして製品にするとなると、ガラス原料自体がどこの工場で溶かした瓶なのかというところまで追跡しないと、ガラスの組成がぐちゃぐちゃになってしまう。

鼓子:難しいんですね……。

田口:そこまでは追跡できない。特に海外からのワインボトルなど、そうですね。だから結局、破砕して混ぜるということになるんです。厳密にまた溶かして何かを作ろうと思うのであれば、ここの工場から出てきたガラスでこの色です、という指定をして分類できないと難しいですね。

鼓子:大変だ。ここはそれを一社でやっているということですもんね。

田口:そうですね。まあ、蛍光灯の場合はどこのメーカーさんが作ったとしても、ある程度のガラス組成っていうのは揃っていますから。違う工場が作ったものであっても、ある程度であれば混ぜられるし、逆にああやって千四百度まで精製してあげることで、ガラス自体もなじむことができる、ということですね。ちなみにこれが、うちができる最大サイズ。

巨大なガラス板
▲こればかりは実際に目の前に立ってもらわないと、その大きさが実感できない。とにかく「圧」がすごい。

鼓子:でかい!これは金型じゃないですよね。

田口:これはガラスを流し込むという製法ではないんですけれども、横にある窯で作ります。

草児:3メートルくらいありますか。

田口:2.92メートルですね。

鼓子:分厚い!でかい!重そう!

草児:この表面のザラザラ……気泡ですか?

田口:気泡です。これは蛍光灯のガラスよりも透明感が強いんです。なので100%リサイクルガラスではありません。これは、より透明に近いものをという指定が入ったので、リサイクルということは一旦置いたんですけれども。

草児:そういうことにも対応できるんですね。

田口:「リサイクルガラス工房」と謳ってはいますけれど、ガラスを溶かして製品化するという僕らの技術は他社にないものなので、そこは臨機応変に対応しています。

鼓子:こういう大きな注文も来るんですね。

田口:そうですね、お陰様で。

草児:あの、そこの「1に対して10 を考えろ」っていう張り紙(※)は……?

※写真を撮り忘れて残念だが、工房内に手書きの、味のある張り紙があった。

田口:あっ、それは僕が勝手に……(笑)。

鼓子:いいですねえ(笑)。

田口:やっぱりね、そこまで考えていかないと。「これやって、あれやって」だったら別にアルバイトでもいいだろうって。

鼓子:自分で考えて動く。

田口:ここにあるテーブルも椅子も、純粋に蛍光灯ガラスのみで製作したものです。

鼓子:模様がすごく素敵ですね。これは何か入れるんですか?

田口:入れてはいるんですけれども、すべて蛍光灯由来の材料です。

模様の入ったガラス
▲独特な模様が、ガラス一面に広がっている。

草児:カレットをそのまま入れているんですか?

田口:そこら辺はちょっと企業秘密です(笑)。でも使っているのは、間違いなく蛍光灯のガラスのみです。

鼓子:(制作事例を見ながら)これ、ブラウン管ですかね。面白い、お洒落な色ですね。

田口:この色はすごく独特で。デザイナーの方々にも好まれる色ですね。

鼓子:赤色は何で出すんでしょうか?

田口:赤はリサイクルガラスではなくて、今はだいたいセレンという鉱物ですね。発色っていうのは、延ばすとわかるんです。たとえば「真っ黒」っていう色は、基本的に存在しないんですよ。染色もそうだと思いますけれども、黒ですけど、薄く延ばしてしていくと実際は黒ではない。

鼓子:青、みたいな。

田口:青の濃いやつとか緑、紫色の濃いものとかなので、ガラスの世界で純粋に黒というのは存在しないと言われています。まあでも「できる」って言う方々も、科学者の中ではいらっしゃるんですけれども。これが、ブラウン管のガラスです。ブラウン管オンリー。

鼓子:リッチな感じがしますね。

田口:ブラウン管でも、メーカーによって何種類かあります。だから実際、ちょっとグレーのものだったり、ほぼ黒いものだったり。蛍光灯ガラスとブラウン管ガラスというのは、単純に溶かせばその色のガラスにしかなりません。ですが、我々の方でガラスの形状ですとか、焼成する温度をコントロールすることで、同じガラス原料、蛍光灯100%でも「テクスチャ」を変えることができる。それが強みなんです。ですからこれも、同じ原料だけれども後ろが見えないようにすることもできるし、これはグラデーションを泡で表現しているんですけれども、そういったことも可能です。

制作事例の説明
▲田口さんから制作事例の説明をしていただく。

草児:こういうやり方というか技術っていうのは、だんだんに編み出していくのですか?

田口:「こうやったらできるんじゃねえ?」っていう……「よし、やってみよう」って(笑)。

草児:意外とできた、みたいな(笑)。何でしょう……結構、工房として独立していて、自由度があるんでしょうか?

田口:そうですね、やっぱり物を作る人間って、遊び心が半分はないと。

鼓子:発想が生まれないですよね。

田口:決まったものばかり作るのも、それはそれでマニュアル化できていいのかもしれません。でも視野を広げるという意味では新しいもの、いろんなものを創造していかなければいけないですし。うちがお付き合いさせてもらっているお客さん、設計事務所とかデザイナーさんですとか、彼らは彼らなりにガラスというものをたくさん見てきていらっしゃる。でもガラスという素材の、性質までは理解していません。なので逆にぶっ飛んだ意見を言ってくるんですよ(笑)。

鼓子:「そんなの無理だよ」というような。

田口:いや、ここ(喉元)まで出かかりますけれども(笑)。

鼓子:「無理です!」とは言わず、「やってみましょう」と(笑)。

田口:僕は何か、プライドがありますので、できないってことはやっぱり言いたくない。もちろん物理的にできないことは、それはちょっと無理ですけれど。どうやったらできるかを考えるのが僕らの仕事ですし、そこはうちの規格外なのでできませんと言ってしまうのは簡単なことですが、僕もクリエイターとしてそれは口にしたくない。

鼓子:かっこいい!

草児:受注していく中で、新しい技術が生まれることもある、ということですね。

田口:そうですね。逆にお客さんの方から発想をもらうというか。ぶっ飛んだ意見に対して「そんなことできるわけないだろう」って喉まで出かかっても、うん、でもやってみないと分からないよねっていう。そういうことを、うちら従業員もしっかり考えていかないと。なので「1に対して10を考えろ」と。
うちの会社としても最初は、廃蛍光灯のリサイクルガラスを溶かしたら何かできるんじゃないかっていうところからスタジオリライトが始まったものの、原料はあるけれども、じゃあ実際溶かしてコップを作ったときにはもう百均屋さんに並んでいるコップと、機能としては一緒じゃないですか。片や100円。それを我々が、これだけの設備と職人を用意して時間をかけて、どうしても一個1,600円とかにしてしまうんですよ。でも機能としては変わらない。そうなってくるとやっぱりね……もちろん全て百均じゃなくていい、やっぱりこだわったものを使いたいっていうお客様はもちろんいますけれども。需要と供給から考えたら、どれだけテーブルウェア作ってたってしょうがないでしょうっていうところなので。僕自身本当に、最初は悩みました。何を作っていいのか。

鼓子:蛍光管から作っていますということだけでは、売りにならないんですか?

田口:なりません。

鼓子:そうなんですね……厳しい世界だ。

田口:もちろんそれで、それが環境に優しいんだっていうところで、コップを買う方もいらっしゃいますけれども。全体から見たらごく一部です。

鼓子:広がらないか……。

田口:広がらないですね。なので、本当に苦労しています。

鼓子:そうなんですね。

田口:だから、規格を作って何かしようと思っても、結局その規格自体が売れなくなったら、製品も売れないわけです。規格を持つってことは在庫を持たなきゃいけないということにもなりますし。売れなかったらこの在庫どうするんだ?っていう話です。ならば受注生産で、と。
でも受注生産にしても「お金と時間があれば、何でもできます」と言われても「じゃあ何ができるの?」っていう話ですよね。だから考えたのが、サイズとか大きさとか形状は二の次として、「リサイクルガラスでこんな表現が出せるんですよ」っていうところで、このガラスデザイン……テクスチャを、デザイナーの方々に見せようと。それって、みんなが見たことないものなんですよ。「ガラスで、こんなものどうやって作るの?」っていう。そこから「これをテーブルトップにしたい」という具合に話をもらって。僕としては作れる技術があるし、この強みについて説明できるので、デザイナーとか設計の方に直接会って話をして、キャッチボールしながら「こうしたら安くできます」「こうしたら高くなるから、こういう方法があるよ」ということを提案していく。そうすると、その人にとってガラスといえば、一部分は『リライト』になってくるので。ガラスで何か作りたいけど、分からないからスタジオリライトに聞くっていう。

鼓子:思い浮かぶ顔。

田口:というやり方を、今はやっています。ごくごく一部ですけれども……。

鼓子:(事例写真を見て)ヒュー、おしゃれ! これ、波打ってるみたいで綺麗ですね。光との相性がいいんですね。

田口:ガラスは絶対に、光ですね。

草児:すごくラグジュアリーな空間になっていますね。どういうふうに依頼が来るんですか?

田口:「噂を聞きつけて来ました」みたいな。

鼓子:口コミで。

田口:こんな馬鹿なことをするのはスタジオリライトくらいしかないだろう、みたいな。

草児:ガラス界でいえば、異端児になるわけですね。

田口:そうですね。

草児:褒め言葉ですね(笑)。原料が出てくる過程もそうですけれども、尖ってますね。

鼓子:ガラスのリサイクルと聞いて思い浮かぶものと、違いますよね。想像を超えてくる。

草児:強度チェックとか、されるんでしょうか?

田口:強度試験というものはもちろんしていますが、そういう規格を求められるような製品ではなく、あくまで装飾ガラスとしての認識です。用途に応じて必要であれば数値は取るけれども、同じものを10個作っても、手作りである以上は微妙に数字が変わります。

鼓子:一つとして、同じ規格ではない。

田口:あとはもう、僕らの経験値でもって「そういう使い方をするんだったら、厚みはこれくらいあった方がいいんじゃないですか」とか。「ここは危ないので、ちょっと補強剤入れてください」とかっていう提案になります。

草児:どんどん提案できますね、そうすると。作品に対して入っていけるというか。

インタビューの様子

田口:だからどんな案件も気持ちが入るので、盛り上がりますよね。

鼓子:なるほど。

田口:今ではアパレルメーカーさんのところなどにも、ガラスブロックを置かせてもらっています。

鼓子:それは、営業をかけたわけではなく?

田口:これはデザイナーの方から……デザイナーさんがいろんな素材を探して、うちに「何かできることがありますか」という連絡が来た。それで「打ち合わせをさせてください」という運びになりまして、「こんなことができます、あんなことができます」ということを提案して、決めていった。

草児:そういう時代が、来ているんですね。

田口:やっぱりそういった人の想いだったり気持ちというところを聞いてしまうと、こちらも気持ちが入ってしまうので。何としてでもやってみたい、っていう。実際それを作って、見てみたいという欲が……(笑)。

鼓子・草児:(笑)。

田口:そこはやっぱり、クライアントさんにも納得していただいての製品作りになります。

草児:個人というか、一般の家庭の方から依頼されることもあるんですか?

田口:個人さんが直接うちに来られるっていうのはまず、ないんですけども。近所で噂を聞いて、というところでなきにしもあらずなんです。製作可能なものに関しては、1個でも対応はします。

鼓子:すごいですね!

田口:ただ「時間をください」って。それに1個なので、ちょっと割高になりますということは伝えます。わざわざうちを訪ねて来るってことはやっぱり、よっぽどのことでしょう。よっぽど欲しいか、よっぽどどこにも断られて……。

鼓子:どんな依頼なんだろう(笑)。

田口:だから、なるべく対応するようにしています。今ではネットツールを使って、Creemaとかを利用して、うちのテーブルウェアとかも販売させてもらっています。まあ、お客様のほとんどは商業施設であったりホテルであったりオフィスビルであったり、というところです。

草児:「Re」 っていう刻印は「リライト」ですよね。あれはトレードマーク、ロゴマークのような感じですか?

田口:そうですね。リサイクルガラスですよ、という差別化をする意味でも刻印しています。全ての製品に入れているわけではないんですが、あの刻印が入っていれば間違いなくうちが作ったものだという認識です。先ほど言ったように、もし何らかの理由で廃棄されるときには、純粋に100%だからまた使えますよー、という目印的な。

鼓子:ああ、そうか!

草児:この「リライト」の名付け親は……?

田口:名付け親は、誰でしょうか?社長ですか?今となっては……。

麻生:ちょっと、書いておかないとダメですね(笑)。

田口:思いとしてはやっぱり、リサイクルの「リ」にかけたり、うちはもともと電気屋さんということでもあるので、ライトに「再び光を」という意味を付けるための「リ」であったり。というふうに、こじつけていますけれども。

鼓子:すごく素敵なネーミングだと思いました。もう一度輝けるんだ、と思って。

草児:こちらをお伺いしたきっかけというのは、赤木洋勝先生へのインタビューの折に、こちらで作られたコップをいただいたんです。

田口:あのふにゃふにゃの。

鼓子:はい!あの可愛いやつ。

草児:実は今日、持ってきているんです(笑)。僕、晩酌に毎日使っていて。

田口:あれはね〜、自分で作っておいてなんですけど、すごくいいんですよ。

鼓子:あー、やっぱりー!

田口:本当に、使いやすいです。サイズ的にもそうですし、洗いやすいし、収納しやすい。名前がね、あれ、「へなちょこグラス」っていうんです。

鼓子:え!めっちゃ可愛い〜〜〜!弱そうに見えて強い、というところがいいですね!

草児:お湯でも大丈夫なんですか?

田口:いや、基本的に耐熱ガラスではないので、熱は避けてほしいです。

草児:でも本当に、手にしっくりなじむ。これをいただいて、同時にご縁をいただいた。これは絶対に見に行かなければと思いまして。赤木先生へ土産話を、と思ったんですが、実はこの間亡くなってしまわれて。

田口:そうでしたね……。

草児:動くのがちょっと遅かったな、というのが正直なところでした。でも、墓前にご報告したいようなお話をいろいろ聞けて、よかった。赤木先生もおっしゃってたのが、これは本当に「シンボル」みたいなものだと。もちろん実用性もあります。だけど……本当は水俣でああいうのができればいい。でもまずは、知ってほしいという思いがあると。目の前にこういった製品があれば、これが生まれてきた過程、廃棄の現場も含めて遡ることができて、何か考えるきっかけが生まれる。そうすると生活が少し豊かになるんじゃないかっていうお話を、最後にされていたのが、印象的だったんです。

田口:赤木先生には我々も本当にお世話になっていましたし、僕も水俣の研究所の方には行かせていただきました。先生はうちのこのガラス、すごく気に入ってくれて……。

鼓子:すごく気に入っておられました!熱弁されてましたよ!

田口:たまに電話がかかってきて、「田口君、あのコップが欲しいんですが」「はい、すぐに送りますー!」(笑)。

草児:だから、これは受け取っていいものか、と。ただ、「その代わりに、サワヤ行ってください」みたいな。

鼓子:「そしてできればガイアが販売店に」みたいな(笑)。ちょっと笑っちゃったけど、でもそれが本当に、赤木先生の……。

草児:真っ直ぐな方ですよね。

田口:そうですね。

鼓子:直球で来られるので、ハイ。

草児:水俣でも「リグラス」といって、分別された瓶を再利用して花瓶とかコップにする工芸はあるんです。ただ廃蛍光灯を使ってどうこうっていうのは、あまり知られていないんですよね。だから水俣にも、この話を広めたい。

田口:自社工場で綺麗にしたガラスを、もうひと手間かければこういう製品としてまた利用価値が生まれるんだっていうことを、僕らももっと露出していきたいと思っています。

草児:水俣の外で実践されているいい取り組みって、もっと学ばなければいけないな、というのが正直なところです。

電球型のペーパーウェイト
▲ここにも、電球の形をした作品があった。どうやらこれはペーパーウェイトになるらしい。

田口:僕、元々は北海道出身なんです。小樽でガラスの修行をしまして、そこから全国って言ったらオーバーですけど、いくつかガラス工房を渡り歩いている中で、もう15、6年前かな。うちの社長の尾崎と出会うきっかけが、たまたまありまして。蛍光灯のガラスでものを作るガラス工房を立ち上げるんだ、みたいな話になって……もうそのときは立ち上がっていましたけど。
その頃は僕自身、リサイクルガラスって、そんなに言葉としてもなかなか聞かないというか。実際にものを作る立場としても、ガラスでリサイクル原料というのは、ちょっとピンと来なかった。僕らの世界、といってもハンドメイドの吹きガラスの世界なので、生成されたガラス原料を使うのが当たり前、くらいの感じだったんです。でも実際触ってみて、まあ面白いなというか、実際に廃棄されている蛍光灯の色そのままを反映できることに面白みがあったりとか、ガラス本来の色という魅力に惹かれたところがあった。それでここに来る前、僕は神戸にいたんですけれども、ある日尾崎から電話が入って「尾崎だけど、金沢にいつ来るんや?」って。

草児:押しが結構、強い感じですね。

鼓子:どう考えても、そうですね(笑)。

田口:「どうもお世話になってます〜」って言いながら、僕の頭の中では「どこの尾崎だ?」と検索をかけている。

鼓子:声だけでは、難しいですよね。

田口:「尾崎だよ」「失礼ですけど……」「ああ、金沢の尾崎」。

草児:まだいくつか選択肢がある(笑)。

田口:「もう部屋を作って待っているから」「(何のことを言っているんだろう?)……ああ、サワヤの尾崎さん!」って。実際、今でも建物があるんですけども、うちの会社の倉庫を一部改装して部屋が作ってあって。「お前はいつ来る?」って聞かれて(笑)。

鼓子:すごい引力のある方なのですね。

草児:道を拓いていくタイプの人ですね。

田口:タイミングですよね。僕自身も、そろそろ神戸を離れてまた新境地で、という気持ちもあって。いろんな偶然必然が重なって、じゃあお世話になってみようと思い、裸一貫で金沢に来ました。もう15年くらい経ったかな……。

草児:人に歴史ありとは、まさにこのことですね。

鼓子:そうやって裸一貫で飛び込みたくなるような……先ほど尾崎社長は麻生さんにも声をかけられたっていうお話を聞きましたけど、社長自身に惹かれる何かが、あるのでしょうね。

田口:まあ、結果的にそうなんですよね。魅力のある人ですし。何年か付き合ってきて、今の方が魅力を感じますね。いい意味での……まあ、いろんな意味での魅力なんですけど。僕も何軒もガラス工房を渡り歩いて、引越しも何回もやって、年齢よりかは多くの人に会っているはずなんですけれども、尾崎みたいな人には会ったことがなかったなーという(笑)。

草児:赤木先生もおっしゃっていました。その理念が素晴らしいから、って。

田口:まあね、一代でここまでやったわけですし。

草児:お陰様で、僕がいいコップにありつけた。へなちょこグラスという名前だとは、知りませんでしたけれど(笑)。

田口:それこそ、赤木先生も知らないんじゃないかな(笑)。

鼓子:すごくいい名前だと思います。可愛くて。

草児:あれ、缶ビール1本を3回に分けて注ぐとちょうどいいんですね。品質が楽しめて、本当にいいですよね。

田口:あれは子どもでも使えるサイズなので。ただ、ネットだと本当に売りにくいんですよね。形が全部バラバラだから。

鼓子:それがよさでもあるんですけどね……確かに、お客様にとっては。

田口:そう、画像でしか判断ができないから。角度をちょっとずらすと……。

鼓子:違う見え方になってしまう。でも「どんなへなちょこが届くかお楽しみに!」みたいな、楽しみはありますよね。

田口:僕らも「リサイクルガラスだから泡が入っています」とか書いていますけれども。「逆に泡を入れているんです。その泡が綺麗なんです」って。「こういう泡、いいですね。不規則に入るこういう泡は、問題ないです」と説明して販売しても、「こういう泡だとは思っていなかった」ということもある。

草児:厳しいところがありますよね。実際対面して見てみる、というところまでが購入方法というか。

田口:そりゃお客様はさまざまなんですけれども、できることであれば手に取ってもらって、悩んでもらってからの方が、そのコップというアイテムへの愛着感が違いますよね。

鼓子:そうですね。「私にはこれ!」っていう。

田口:うん。やっぱり1個1個、表情が違いますし。そこはでも、手作りの良さかなと思います。

草児:リサイクル業界とかっていうのはまだ一般の人から見えづらい、離れたところにある気がします。だからこそ、距離が少しでも近づけばいいんじゃないかなって。基本は「ものづくり」だというところを一つ理解するだけでも、全然親しみ方が違うんですよね。こういうものを、職人さんが真剣に作っている。原料の前から、選別を含めしっかり処理をしてやっているという、その工程が見えるだけで、その世界への入り方が全然違ってくると思うので。

田口:そうですね。

草児:我々も微力ながら発信して、僕らの知っているお客さん達にそういうのを少しでも知ってもらえたらなー、という思いがまず一番にあるものですから。

 

(終わり)

※登場した「へなちょこグラス」は、サワヤさんのご厚意により2020年秋からガイアみなまたでも販売をさせていただいております。商品の詳細はガイアのオンラインストアをご覧ください!
>>「へなちょこグラス」商品紹介ページはこちら