廃蛍光灯リサイクルの現場を、訪問しました【前編】

サワヤのガラスカレット
▲サワヤの廃蛍光灯リサイクル工場から生まれる、ガラス原料。

お話を伺った人:麻生信二さん(株式会社サワヤ常務取締役)
聞き手:高倉鼓子、高倉草児(ガイアみなまた職員)

20年春、通信ガイアから61号で国際水銀ラボの赤木洋勝先生と対面。その際、赤木先生の開発された水銀除去システムを応用して、廃蛍光灯からリサイクルガラスを作る会社が金沢にあるとお聞きした。「是非行ってみてください」と背中を押されて、我々はこの夏、実際に株式会社サワヤを訪問。本記事は、そのときに行わせていただいたインタビューの記録である。お忙しい中を取材に対して快くご対応くださったサワヤの皆様に、この場を借りて御礼申し上げます。

>>赤木洋勝先生との対面記事はこちら

(株式会社サワヤ・リサイクル事業部にて ※以下敬称略)

鼓子:(通信『ガイアから』を渡しながら)毎年春と秋に発行していまして、今度は10月に発行予定です。前回4月に発行した際に、サワヤさんのお話を赤木先生から聞いておりまして。そのときに先生から「是非サワヤさんに行ってください」と……。

草児:それが、遺言のような形になりまして(※)。

※赤木洋勝先生は、20年8月にお亡くなりになられた。心よりご冥福をお祈り申し上げます。

麻生:本当にそうですよね。つないでいただいた、という……亡くなられたことは、残念でしたよね。

草児:そうなんです。だからこそ是非一度、訪れたいと。

麻生:赤木先生がいなかったら本日こうやってお会いすることもないという、何だか不思議なご縁がありますけれども。

草児:そうですね。

鼓子:赤木先生が開発された技術をもとにして金沢でこういったリサイクル事業が行われているということを、水俣にいながら全く知らなかったので、驚きました。

麻生:弊社専務取締役の尾崎が毎年赤木先生の元へ伺って、お話をさせていただいたりしていたんです。

草児:そうだったんですか。

麻生:おそらく、一年に一回は行っていたと思います。

鼓子:はい、赤木先生もそうおっしゃっていました。来てくださって、でも自分が、何というか……。

草児:「技術提供した後のサポートが何もできていないことに対して、申し訳ないと思っている」と、おっしゃっていました。それで「あなた達が行ってきてください」と、水を向けられた(笑)。

麻生:どんなに素晴らしい技術があったとしても、それを使う人がきちんとやらなければ、技術は台無しになってしまいます。きちんとやる、という意識的な部分が大事かと思い、弊社もこうやって取り組ませていただいている次第です。

鼓子:本来ならば水俣で、こういった技術が生かされた形が何かあればいいんですが、今のところなくて。蛍光管の分別回収はもちろんやっていますが、そのまま……。

草児:おそらく今は、ちょっと離れた別の市の中間処理工場で処理した後、最終的には他の処理会社に持って行くのかな、と(※)。

※脱水銀化処理をされた後の蛍光管ガラスは一部、路盤材などに再利用されている。(2020年9月9日、水俣市環境クリーンセンターに確認)

麻生:蛍光灯の処理会社というと、それぞれが地理的に遠く離れているところが多いんです。だから同じ仕事をしていますけれども、いろいろ話をして情報交換をさせてもらっている、というのがあります。

草児:処理設備というのは、どこの業者さんであってもそんなに変わらないものになるんでしょうか。それとも独自のノウハウみたいなものがそれぞれに?

麻生:それぞれ導入されているメーカーが違います。たとえば弊社は、水を使わない乾式処理です。蛍光灯ならば、まず口金のところにアルミがありますよね。この差し込み口の部分を、カッターで自動的にカットして真鍮を取り除きます。その次の工程で、蛍光灯の外側の汚れをブラシで綺麗にする。常にブラシが動いているところに流していきます。これも自動です。ガラスを砕いた状態で細かい汚れが入ってしまうと、後から取り除くのが非常に難しいんですね。

草児:いわゆる、最終製品の品質低下を招くんですね。

麻生:そうですね、品質低下と……こういったものを除去する機械はもちろんありますが、あまり細かいものがたくさん入ってしまいますと、たとえばエア(風)で飛ばしたときに、全部飛んでしまって何も残らないことが……(苦笑)。

鼓子:そうなんですね。

麻生:ピンポイントで汚れを飛ばすことは、まずできない。周りの大事な素材も一緒に省いてしまうことになります。そうなると、何をしているか分からない(笑)。

草児:仕事にならないですね(笑)。

麻生:ですから、素晴らしい機械はいろいろあるんですけれども、その機械にかける前の段階、初めのうちに混ざってはいけない部品を手作業でいかに取っていくかというのが、すごく大事になってきます。

鼓子:手作業なんですね。

麻生:ブラシで落としたら、次の工程としては口金のアルミ部分をヒーターで温めます。蛍光灯のガラス管とアルミを接着しているボンドの接着力が弱くなりますので、そこに刃を当てて外していく。蛍光灯の流れてくるところに刃がグルグル回っていまして、そこに当たればでポロッとアルミだけ取れるように……。

草児:とにかく蛍光管のガラス部分を割ってはいけない、ということですね。

麻生:そうなんです。割ってしまうと、次の作業ができないこともあります。また途中で割れると、端にボンドが付いているので、破砕すると本当にいろんな汚れが混じってしまう。アルミを接着してあるボンドはポロポロ取れますので、細かくなってしまう。どうしても割れてしまうことはあるんですが、なるべく当たらないように注意しながら作業をしていく、という感じになりますね。

鼓子:手間がかかりますね。

麻生:口金を取った後に、ガラス管だけをカットしていきます。そしてカットした端の部分は、真ん中の部分とは別々に破砕していく。

草児:それはどうして?

麻生:端部のガラスには接着剤が付いていて、一緒にすると混ざってしまうんです。

蛍光灯の接着剤跡
▲「この部分も取る必要がありますね」と接着剤跡を削る麻生さん。

鼓子:汚れているんですね。

麻生:接着剤って、やっぱり綺麗には取れない。また蛍光灯の端部の内側にはフィラメント、そしてタングステンという金属がありまして、ちょっと触るとポロポロ落ちるので、混ざってしまうと再生作業が難しくなるんですね。どうしても端の部分には異物が多いので、真ん中を生かすために端を取らないといけない、というところがあります。
かっこいいことを言えば本当は、全部が全部、100%リサイクルできた方が大手の企業さんには受けがいいんです。「うちはリサイクル率100%です」と言えたらいいかな、と思うことはあるのですが……100%にすることによって品質を落としてしまうというのは、それはちょっと違うのかな、と。綺麗なものは綺麗なもので残して、埋め立てなければいけないものは適切に処理をしていく。「何となく」でリサイクルをしていると、後々に使えなくなっていくという結果になってしまいますから。
たとえば今までは、日本から中国にプラスチックや金属を輸出してきたんですが、綺麗なものばかりではなくいろいろ混載したものが一緒に行ってしまっていた。いわば、ゴミも一緒に出してしまうイメージです。中国の方でも、ゴミが送られてきたら困りますよね。だから今、受け入れが非常に厳しくなってきています。今までは、ちょっと異物が付いていたとしても全部買い取ってくれていたのですが、それができなくなってしまった。行き場がない。ですから産業廃棄物処理の現場では、自分のところで品質を高められる機械を取り入れたりするような取り組みをしていらっしゃるところが、おそらく多くなってきます。もう、製造業に近づいてきているようなイメージですね。産業廃棄物の処理業なんですけれども、製造部分も考えないと成り立たない、というような。しっかりと使えるくらいの品質まで持って行く、ということです。

草児:出口の、製品の部分を。

鼓子:自分たちの役割はそもそもそこではなかったところを、プラスアルファ、もうやらなければいけない。……すごく面白いところですね。

麻生:そうですね。廃棄物の処理業も、品質が問われるようになってきている。まあ、当たり前と言えば当たり前ですけれども、そういう時代になってきたかな、と。結局、金属なんかでも輸出されて、それを日本のような設備がないところで、燃やす。燃やすとプラスチックはもちろん飛んでしまいますので、今度は残った金属だけ回収してどこかへ持って行く、ということになります。ただ、設備が整っていないところでそういう作業をやったときに、環境への影響は大きいですし、健康被害も出てきます。水俣病の原因となった水銀もそうですよね。アマゾンの方で今も問題があったりするというのは……きちんとした設備の中でやっておけば、そのようなことにはなり得ないんです。ところが実際、大きな影響を及ぼしている。国内から国外にゴミを送って、そこで環境汚染が起こるというのは、それはどうかな、と思うんです。

草児:御社のウェブサイトを拝見して、環境方針として「ビジネスを通じて汚染を予防する」という一文に「これは!」という思いがしました。水俣市でも、環境で飯が食えるかという議論は、ずっとやっているんです。産業団地を形成して誘致して、というのを市を挙げてやっています。
おっしゃっていただいたように、業界としてどうしても厳密にならざるを得ない、ということ。製品になるのは、できるだけ綺麗なものであるように、とか。そういう、製品を出口として見たときに、やはりきちんとした手順を踏まないといけない。しかもそれは、できるところは自分達の持っている工場であるとか、国内でやる、と。「公害を輸出しない」という観点ですよね。すごく、身に沁みて分かります。

麻生:悪いことって、どうしても報道されやすいじゃないですか。つい最近も、とある会社が汚染水をそのまま排出していたというような記事が出ていました。私たちの仕事は環境に与える影響が大きいですし、特にこの産業廃棄物処理業という業界の括りでの話になるので、悪いことをしてしまうとクローズアップされるのは仕方ないのですが……そういった業者はたくさんある中のごく一部で、真面目に取り組んでいらっしゃる企業がほとんどなんです。だから、いい取り組みというものをしっかり目に見える形にしていかないといけない、と思いますね。

草児:僕らはみかんを作る仕事を中心にしているのですが、要はゴミを出す方ですよね。蛍光灯一つにしても、一般的な消費者、家庭にいる人間としてゴミを出す立場にいます。にもかかわらず、その先を理解しようとしない、知識欲のない自分が一方にいる。自分達が出したもの、これがいったいその先でどうなっていくのかを知ることができれば、少しはゴミというか、資源に対する意識も変わってくるのではないか、と思うのですが……。

麻生:そうですね。どこでどう処理されて、というのを知ることができたら、これはこうした方がいいんじゃないかという考え方につながってくると思います。知らない状態だと、そのままパッと出してしまうかもしれない。でも、一般的に皆さん、もちろん市のゴミ分別方法に従って出していらっしゃると思うんですよね。それに加えて「その先」っていうこと考えると、見え方が少し変わってきたりするかもしれないですね。

草児:お話を聞けば、やはり蛍光灯は分別回収されるまで、できるだけ割らない方がいいんですもんね。

麻生:割ってしまうとどうしても、判別がつかなくなってしまいますからね。これが蛍光灯のガラスかどうかということが分からなくなってしまうと……ガラスって、他のものが混ざってしまうと、たとえば製品を作ったときに割れてしまう、ということがあります。使っていただく先に、問題が出てくる。よくガラスの分別で「耐熱ガラスを混ぜないでください」という注意書きが書いてあると思いますが、耐熱ガラスというと、硬いガラスを使っている。だから種類が違うものになる。これが混ざってしまうと、割れてしまったりとか、品質に影響が出てくるので、そういった部分では注意をしていく必要があると思いますね。

鼓子:話を戻して申し訳ないのですが、先ほどおっしゃった「廃棄物の品質を求められるようになってきた」というのは、だいたい何年ほど前から起こってきたことなのでしょうか?

麻生:プラスチックなどは、ついこの2、3年くらいの話だと思います。弊社では蛍光灯やガラスを扱っていますので、そういったことで言うと、始めた当初から求められているところはあるな、と。製品として企業や施設に納めると同時に、個人の工芸家さん、作品を自分で作っていらっしゃるところにも供給しています。そういうところは、直接自分で窯に原料を投入したりする。そうすると、異物が混入していればすぐ分かりますよね。なので、その辺りは結構気を使っています。
たとえば蛍光灯であれば、いろんなメーカーのいろんな種類の蛍光灯が一つの処理工場に集まってくるんです。それをリサイクルしなければいけない、という話になりますので……かなり品質の高い部品が工場に来て、それを組み合わせて製品を作るというときでも不良品が出ることがあるんです。産業廃棄物の処理で難しいのは、皆さんが使い終わったもの、これはもちろん元の製品よりも劣化していたり、品質が悪くなったものです。それがこちらに入ってくるので、普通に扱って割れないものが割れたりする。

工場に搬入される多種多様な廃蛍光管

工場に搬入される、多種多様な廃蛍光管
▲たくさんの種類の蛍光灯が、日々搬入される。

鼓子:脆くなっているんですね。

麻生:表面が真っ黒になっていたり、厨房などで使われたものですと、蛍光灯を油で揚げたんじゃないだろうかという感じの。

鼓子・草児:(笑)。

麻生:こんがりしたものが、出てきたりする。そういったものをまた再生していくとなると、すごくハードルが高いんです。ですから、排出される事業者さんの協力が必要です。分別の努力をしていただかないと、なかなか再生に行かない。ただ弊社も商売でございますので、あまり細かい条件をお客様に提示することは、難しい。お客様ができる範囲で、ある程度「こことここだけをお願いします」というような感じで取り組んでいただき、最終的にこちらで分けるという具合になります。

草児:その真っ黒くろすけになったものでも、ある程度は利用できるんですか?

麻生:真っ黒くろすけはちょっと、難しいですね。その蛍光灯一本に対してどれだけでも時間をかけていいですよ、1時間くらいかけて綺麗にしようということをやっていたら、とてもじゃありませんが事業にならないですね。本当は綺麗にした方がいいのでしょうけれど、時間をかけると電気代がかかったり、人手を必要としたりして、逆に環境にもよくないのではないか、ということもあります。なので、ある程度自然の流れの中でできるような環境で、うまいこと回すということを考えないといけない。

草児:それこそ分別が必要ですね、そこには。

麻生:いろんな条件がありますので、難しいですよね。

鼓子:サワヤさんが引き受けていらっしゃる蛍光灯は、市が回収したものではなく、各企業さんから……?

麻生:そうですね、元々は各企業様のものがメインだったんですが、今は市内一般のご家庭のものも弊社で処理しています。

草児:家庭からそのまま持ち込む、ということもアリですか?

麻生:直接弊社には持ち込めないのですが、町内から分別回収ステーションに集められたものを、一般廃棄物収集を市から受託している業者さんが回収し、それを弊社工場に持って来ていただくという流れになっています。ですので、ご家庭から出てくる丸い蛍光灯がありますよね。これは一日中ずっと、手作業で解体していただいています。

鼓子:解体?

蛍光管解体の様子
▲一般家庭でよく見られる、円いタイプの蛍光灯。蛍光管を束ねている部品を手作業で外し、解体する。

麻生:機械ではなかなかできない、プラスチックの部分を外す作業です。プラスチックってガラスが溶ける前、水銀が気化するよりも早く溶けてしまうものですから、イメージとしてはこうやってガラスを覆ってしまうといいますか……。

草児:水銀が閉じ込められてしまう。

鼓子:なるほど。

麻生:ガラスであったら500度をもう少し超えないと溶けませんが、プラスチックは早めに溶けてしまいます。そうなると、やはり水銀が除去しづらくなってしまう。だから、事前にプラスチックのところだけ分解するんです。

草児:先ほどの、ガラスをカットして真ん中と端部とに分けてからの話ですが……。

麻生:そうですね、カットして両端部分と真ん中の部分に分かれたものは、それぞれ専用の破砕機に投入します。その破砕機の下の方に、蛍光体剥離装置というものがありまして。イメージとしては、よく採石場なんかで石がゴロゴロ回っているものがありますよね。

鼓子:ドラムみたいな。

麻生:ああいう大きなものではないんですが、あれを少し小さくしたものに、破砕したガラスをそれぞれ入れていきます。

草児:両方が混じらないように。

麻生:そういうことになります。装置内に少し高さを設けてありますので、これをゴロゴロを回転させると、ガラスに付いている蛍光体が落ちる。回転させると、また落ちる。

鼓子・草児:おお〜。

麻生:内部は常に空気を吸引している状況ですので、蛍光体などの軽いものはそこから回収されて、ガラスはそのまま残ります。

草児:なるほど。何か薬品を混ぜるような工程かと思ったら、違うんですね。

麻生:そういう類のものを混ぜることはせずに、ガラスが出てきて、今度は水銀を取り除く工程に入ります。最終的には目視で選別して、確認をされると。

草児:確認するときに、金属探知機とか何か、そういったものを使われますか?

麻生:磁気選別機は先に入れてあります。その後に目視で確認していただいているんです。

草児:そしてその水銀を取り除く工程に、赤木先生の技術が……。

鼓子:低温加熱処理装置。

草児:というものが応用されている……?

麻生:そうですね。一番最初の機械が、その低温加熱処理装置でした。そこからまた弊社で改良を加えて、現在の形になっています。

脱水銀化処理装置
▲サワヤで現在稼働している、脱水銀化処理装置。2階建て家屋くらいの高さがある。

鼓子:赤木先生の技術をお知りになられたのは、どのようなタイミングで……?

草児:廃蛍光灯の処理事業自体は、2000年から始められていますよね?

麻生:2000年に、産業廃棄物の処分業許可を取得しているんです。元々は別の機械を入れていて、添加物を投入する方法でやっていたんですけれども、これだとガラスにちょっと色が付いてしまう。なので添加物を使わない方法を探していました。

鼓子:なるほど。

草児:取締役の尾崎さんが赤木先生と会われたことが、直接のきっかけということなんでしょうか?

麻生:その辺りは僕もちょっと……どういった関係で赤木先生を紹介していただいたかというのは、いろんなメーカーさんがいらっしゃるので、そういったのところの絡みもあるのかな、と。いろんな方が携わってくれて、つながってくれるので、そういった関係性の中からではないでしょうか。

鼓子:廃蛍光灯リサイクルの動き自体は、ずっと以前からあったのですか?

麻生:蛍光灯から水銀を除去した後に、ガラスが出てくる。そのガラスが、どこかで「こうやって処理して使ってもらっていますよ」というだけではなくて、自分たちで目に見える形にしていきたいという思いはありました。まずは試験的に、小さな窯でガラスを溶かしてみて、ガラスっていうのは溶けるのだろうか?製品になるのだろうか?というところからスタートさせていただいています。そのときには、瓶などのガラスで作品を作っていらっしゃる方に「これは使えるね」と言っていただいたので、それから工房を作って……。
でも工房を作ったときでも、リサイクルガラスっていうのは実際、まだそれほど認知もされていないわけです。業界内でも、廃蛍光灯から製品を作るという認識はまだなかったと思います。ですから自分たちがまず製品を作って、「こういうふうになります」というPRを行う。知っていただく、というところからのスタートでした。こちらの工業団地の川沿いの、人通りの全然なかった所にガラス工房をオープンしたんですよね。

草児:ここいら一帯、産業団地になっているんですね。

麻生:なので、オープンの日はほとんど身内しか来ていないような状態。そこがまずスタートだったんです。

草児:すると、日本で初めて廃蛍光灯から製品を作った、と考えてよいのでしょうか?

麻生:そうですね。おそらく、時系列で見るとそうなると思います。他のところも、外部で職人さんが工房を持っていて、そこに委託する形で運営しているということはありますけれども。

草児:最初は原料だけ、という計画だったのでしょうか?事前にいろいろ販売サイトを拝見していまして、現在minneやCreemaなんかで、すごい可愛いアクセサリーとか、フルーツ柄の箸置きとか、そういった製品を販売しておられます。製品の多様化というのは、最初はそんなに考えていなかったんでしょうか?要望に応えていくうち、結果的にそうなってきた?

麻生:そうですね、トンボ玉なんかを作っていたときがありましたので……トンボ玉っていろいろなデザインがあるんですよ。そういった流れの延長でいろんな製品を作り始めた、というのはあったかもしれませんね。弊社のガラス工房では、建材関係の受注が結構多いんです。後で工房をご覧いただければ分かりますけれど、壁面とか、そういったものに。
愛・地球博で皇太子様が回されたオルゴールがありますね。これが入っていたガラス製の地球儀は、弊社で制作させていただいたものなんです。

草児:赤木先生もその写真を持っておられました。そうなんですね……。形態としては、大から小まで様々できる、と?

麻生:そうですね。最近ではブラウン管のガラスを使った製品も、作っています。

鼓子:テレビのブラウン管ですか?

麻生:今は液晶になっていますが、テレビのブラウン管って、まだいっぱい残っているんですよ。

草児:それは、まだ家庭にもあるんでしょうか?

麻生:完全に回収されていない部分があると思います。昔のブラウン管テレビをまだ使っておられるご家庭とか、使っていなくとも家に保管していたりとか。

鼓子:捨てるのが面倒だったりしますもんね。

麻生:お金もかかってしまいますからね。

草児:それも蛍光灯と同様の工程を経るのですか?

麻生:蛍光灯とは、また違います。家電のリサイクルをしていらっしゃるところから、弊社が買うんです。弊社が廃蛍光灯を処理してガラス原料にしたものを販売しているように、他のところがブラウン管を処理したものを買っています。

草児:なるほど。それを工房で製品にしていく。

麻生:そうです。使う際は異物など混入がないか、工房で最終的にチェックしますけれども。

草児:そこから先は、蛍光管のノウハウで、幅が広がるわけですね。

麻生:そうですね。デザイン性といいますか、黒いガラスになりますので高級感が出るんです。ガラスっていうのは高級感が出しにくいものではあるのですけれど、黒が入ると結構映える。あ、お茶をどうぞ。これも蛍光灯のガラスです。

鼓子:いただきます。

草児:実は、赤木先生からサワヤさんのコップをいただいたんです(コップを出す)。

麻生:(コップを見て)あ、デザインはそうですね。

草児:この下に「Re」って刻印されています。

鼓子:すごくおしゃれです。

草児:これ、毎日使っています。とても使いやすい。缶ビールだと3杯分くらいかな、一本を3回に分けて注ぐ。それでも、かなり充実感があるんですよね。本当に美味しく感じるんです。

麻生:同じ飲み物でも、グラスが違うと気持ちは変わりますよね。

草児:今はこういったガラス工房と、その後に「もったいないショップ」という、家具のリサイクル事業を展開されていますよね?

麻生:そうですね。(部屋を見渡して)こっちの机とか全部、不要品として捨てられる運命だったものです。その後ろにある机も、椅子も、ホワイトボードもそう。

草児:ほぼ全てですね(笑)。

麻生:こういった処理事業をやっていますと、お客様が、蛍光灯と一緒にゴミも積んでいらっしゃる。それを見た弊社の尾崎が「もったいない」と。まだまだ使える。「使えるやつを、どうするんですか」って聞いたら、捨てるという話だったので、引き取ったのが始まりです。使う人がいなくなったら、どれだけ新品でも高級なものでも、ゴミになってしまう。まあ、もったいないですよね。だからその橋渡しをしようと。

草児:でも、それこそ最初は電気屋さんですよね?

麻生:サワヤとしての事業の始まりは、電気工事屋になります。電気工事は今もやっているんですけどね。

草児:蛍光灯をご自身で取り替えたりして、これが廃棄物になるのを目の前で見ている。そこから「もったいない精神」みたいなものが出てきた、ということなんでしょうか。

麻生:そうですね。蛍光灯っていうと、昔だったらドラッグストアなんか、競合の新店舗ができますとランプを一斉交換されるんです。今はやっていませんけれど、やはり照度が落ちてくるものですから、お店をちょっとでも明るくするために全部交換するという、リニューアル工事みたいなものがすごく多かった。そういうのもあって、ひょっとすれば他の電気工事屋さんよりも、廃棄する蛍光灯の数が多かったかもしれません。それを廃棄物処理業者さんに出すと、全部混ぜて埋め立てになってしまう。水銀が入っているという問題は当初から認識していたので、それはいけないんじゃないかと。疑問を持って金沢市に相談に行ったところ、先行して取り組んでいるメーカーさんがおられたので、そこから廃棄物処理という形を実現させるべく、スタートを切りました。
始めた当初は許可が必要だということも知らなかったので……許可が必要なんですよ。たとえば役員さんが変更になったりとか、所有車が変更になったりっていうときには、すぐに変更届を出さないといけない。

草児:結構、厳密な運用が求められるんですね。

麻生:ちょっと形を変えたら、変更届を出す必要があります。引越しをしようと思ったら、環境アセスメントだったりとか住民の方への説明会を開いたり、隣接する方の同意が必要だったり。何か大きめの変更を、たとえば新しく機械を入れますという話になると、隣接する人たちの同意を一緒に添付して出さないと書類が通らない。

草児:近所付き合いが大事なんですね。

麻生:普通だったら、そこにすぐポンと新しく工場が建てられますけれど……この業界では同意を得ることが前提になります。近隣の方も「同意書」って言われると、何だかちょっと抵抗を感じられるかもしれませんね。

鼓子:そうですよね、保証人みたいな……大ごとな感じがありますよね。

麻生:なのでやはり、近隣の方との信頼関係っていうのがすごく大切になってくる仕事です。

草児:しかしそういう険しい道でも、やる価値があると判断されて進められている、ということですよね。

麻生:弊社の工場は工業団地の中に建っていますけれども、周りの皆さん古くからの方ばかりで、お陰様で、よくしてもらっています。

草児:でも、こういういい製品があるというのが見えるから、信頼が得やすいのではないですか?どこで何してるか分からないっていうことじゃないですもんね。出口がちゃんと見えている。

麻生:分からないとそこに不信感が生まれますからね。特にネット社会では、ちょっと悪い方に想像が膨らんでしまうことっていうのはあるので。何かしらのわずかな情報が、全く違う意図をもって広がってしまったりとかってありますよね。人と人とが直接話をすれば誤解は生じにくいんですけれども、やはり文字になったものは、誤解を生みやすい。だからしっかり話をするというのが大事かな、と思います。

草児:オンラインショップでの商品の評価は高かったですよ。

麻生:あ、そうですか!自分の会社の評価って、あまり見れないですよね……他社さんのはよく見るんですけど。

鼓子・草児:(笑)。

草児:ちなみに、尾崎社長は一代目でいらっしゃるんですか?

麻生:そうですね。尾崎が個人で創業して、そこから転機というか、きっかけになったのは蛍光灯の販売事業に特化したというところが大きかったかもしれません。

草児:設置と販売とで、事業というのは違うものなんですか?

麻生:もちろん、電気工事に伴って蛍光灯も取り扱っていましたけれども、蛍光灯だけ売っていくという感じではありませんでした。工事に付随して蛍光灯の仕入れという仕事がありますけれども、まあ、つながってはいますが、ちょっと違う。それを社長が中心になって、物品販売という形にしていく。そうすると蛍光灯の取り扱い数も、販売数も多くなってきます。多くなってくると、メーカーさんから仕入れをお安くしていただいたりとかいうこともあります。仕入れ値が安くなったら、そのままお客様に黙っていれば利益が増えるんですけれども、弊社のやり方としては、その時点でご案内しやすい金額に下げてお客様に提供させていただいて……。

草児:還元しちゃうわけですね。

麻生:お客様に還元するというところは、大事かなと。でもそのお陰で、新規の営業とかでも、安いので買ってくれるお客様は多いんですよ。そうすると、またお客さんも増えていく。

鼓子:宣伝にもなるんですね。

麻生:まあそれも、たくさんのお客様がいるからできることであって、お客様が少ない状態ではなかなか、そういったところも難しいとは思います。廃蛍光灯の処理も、始めは投資でした。蛍光灯が全然集まっていないのに、すごい高い機械を導入したりして。そのときは電気工事だったり、販売事業の方でマイナスを補填してくれていたという、そういった時期が何年もありまして。リサイクル事業が足を引っ張っている状態だったのですが、他の部門が支えてくれていたので、今がある。
そういった時期があったんだよということは、今の従業員にも話をしています。だから他の部門が調子悪くても、それはそれとして会社として支え合っていかなければいけない、という話はしますね。

工場事務所入り口に設置されている作品
▲工場の事務所入り口にある作品。「廃蛍光灯約430本分を使用し作られた」、とある。1個1個の質感が、半端ない。

草児:先見の明といいますか、水銀に関する水俣条約が2013年に採択されますよね。それに先立って2000年の始めに、水銀を取り除いて、さらに新しい製品を作るという動きが出ていたっていうのは、早いスタートだったと思うんです。

麻生:先見の明というよりも、きちんとしておかなければいけないなと思っていたところが、今の時代に合ってきたというところですかね。真面目にやっていたら結構マイナスの部分もあるんですけども(笑)、そういったところがプラスになるときっていうのが、あるのかなと。コツコツと真面目にやる、積み重ねが大事だという、その基本はぶれないようにしたい。不真面目になってしまうと、何のためにやっているのか、その意味すらもなくなってしまうので。意味がないのに従業員が働くというのも、とても寂しい話ですし。どういった意味でやっているのかという、そこはしっかり認識していきたいです。

鼓子:水俣市ではリグラスといって、ガラス瓶をリサイクルする一環で製品を作るところがあるんです。一概に比較することはできないと思いますけれども、たとえばコスト的にはどうでしょうか?水銀除去などの手間がかかる分、割高になってくる気もするのですが……。

草児:これ(へなちょこグラス)がいくらなのかなー、っていうのは気になるところです(笑)。

麻生:コップなんかの形状は、職人がやる、吹きガラスですよね。手作りだから、1,000個でも2,000個でも作れるわけではない。

鼓子:そうですよね、ひとつひとつ。

麻生:なのでコップを一生懸命売ってはいないんですよね(笑)。

鼓子:どおりで、ショップのリストにないんですよ(笑)。

麻生:まあ、できるのはできるんですけれども……コップっていうと、今はもう100円ショップで手に入ってしまうので。

鼓子:でも、でき上がっていく過程を考えると、ものすごく価値があると思います。

草児:赤木先生もおっしゃっていたのは、実用的であるということも確かにそうなんだけれども、シンボルとしてひとつ手元に置いておきたい、と。これがどういう過程を経て出てきたものかっていう、その背景を含めて。

麻生:そういうところも、結構大事かなと思っています。

草児:そういう意味では、値はどれだけ上がってもいいのかな、という気もしますけれど(笑)。

麻生:それぞれの価値観というか、まあ安いものはもちろん、流通のことを考えてコストを抑えるために必要かもしれません。あとは自分のモチベーションを上げるために、ちょっと高いものがひとつ手元にあると、ちょっと幸せな気分になるというところがあったりとか。なのでまあ、いろいろだな、と思いますね。

草児:水俣では「Re」っていうとリグラスなんですけれども、こちらはやはり、電気に掛けているんですよね?

鼓子:すごくいいなと思いました。

麻生:リライト、ですね。「リサイクルライト」という意味なんです。

草児:この星みたいなマークは……。

麻生:リライトの公式マークです。

草児:あ〜。こういうアイディアは社長が出されるのですか?

麻生:これは誰かなー?工房に行ったときにちょっと聞いてみましょう。

鼓子:すみません(笑)。

草児:麻生さんは、長く勤めておられるんでしょうか?

麻生:そうですね、サワヤに入ったのは2002年だったと思います。私、もともとは産業廃棄物の収集業者にいたんです。

草児:そうなんですね。

麻生:そこのお客さんがサワヤで。ですからこういうことをやっとるなあ、というのは知っていたんですけれども。あるとき、尾崎社長から直接「来てほしい」と言われて……それまで別の方からも言われていて、冗談かなと思っていたのですが。なかなかちょっと、パッと会社を変えるっていうのは難しいなと思っていました。でもまあ、尾崎社長から直接に言われて、というのがここに来たきっかけです。

鼓子:会社の印象は、どういう印象でしたか?動機としてはもちろん、尾崎社長からの声かけがあったのかもしれませんが、サワヤさんの魅力というかイメージみたいなものはありましたか?

麻生:やはり、リサイクルでしょうかね。もともと私がいた会社は、その当時はあまりリサイクルというところを取り組んでいなかったものですから。業界としてまず、リサイクルが前提にないと取引が続かないということにもなりつつあって、なのでリサイクルはやっていきたいと思っていました。他ではあまりやっていないリサイクルということをやられていて、内容にもすごく共感した、というところが大きいのかなと思います。

草児:これからの展望をお聞きしたいです。最近は蓄電池も扱われているということですが……。

麻生:バッテリーのリユースはまた別として、乾電池のリサイクルを、やっています。こちらで選別破砕をして、それを最終的にはリサイクル会社さんに持って行くのですけれども。事前に乾電池を選別保管するというのも、非常に大変な作業です。その辺りでも少しずつお客様を獲得しながら、やはりオリジナリティーを求めていかなければいけない。工夫して、他の会社との違いを出していかないと生き残れないな、とは思っています。なのでまあ、量はそれほどたくさんできなくとも、きちんと使えるものとして循環させる取り組みをしていく。それがこれからの、乾電池だけではない、いろんなことの基本形になるかなと思います。どうしても利益ばかりを求めていくと……会社なのでもちろん利益は必要なんですけれども、きちんとしたことをやっていかないと、やる意味すらもボケてしまいますから。

工場事務所入り口に設置されている作品

草児:お話を伺っていて、リサイクルという業界ですけれども、やはり「ものづくり」なんだなということを強く感じます。

麻生:そうですね。今はもう、そういう時代になってきている。本当に、汚いものはもう売れなくなってきているので……。

草児:しっかり処理して、しっかり選別をして。

麻生:廃棄物でも、今までだったら汚くても買ってくれていたのが、ゴミはただのゴミなんだということになってきている。だから、できるものは綺麗にして、商品なりそういった形にしていかなければ、と思いますね。

草児:職人魂ですね。

鼓子:ちなみに乾電池のリサイクルというと、どのような製品になっていくんでしょうか?

麻生:最終的には亜鉛原料や肥料に使われたりしています。

草児:面白いですね。野菜に吸収されて、いずれ私たちがまた食べる。そういう循環なんですね。

麻生:どうやって循環させていくかというのは、すごい大事になってきますね。弊社の方で廃蛍光灯からガラス原料ができたとしても、使っていただくところがなければ、ゴミになる。それはリサイクルとは言わない。ただゴミを綺麗にして保管しているだけなので、一番環境によくないかもしれない(笑)。ですから循環というのは、とても大事なことですね。

草児:とても興味深いです。

鼓子:あの……実際、蛍光灯は LEDへ変わっていっているんでしょうか?

麻生:変わっているところもあります。ここ3、4年くらいで大手企業さんが結構取り替えていますね。

鼓子:そうすると、これからは廃棄される蛍光灯の量も減ってくるのでしょうか?

麻生:最終的には、そういう時期が訪れることになりますね。

草児:それこそ、水銀を取り出す過程が必要なくなる時代が訪れる。

麻生:そうですね。まだしばらくは時間がかかると思いますけれども…お金がないとLEDへの交換ってできないですよね。

鼓子:そうですね、ものすごく費用がかかる。

麻生:LED に変えたのにマイナスになっとるがな!みたいなことがありますよね。そういう意味では、まだ時間かかるのかなと思うので。少しずつ、ゆるい感じでやって来る。なので、その間に違った事業を育てる、その準備期間に当てていくという。弊社が廃蛍光灯の事業を辞めてしまうと、処理するところが一つ、なくなってしまいますので。

鼓子:そうですね。

麻生:蛍光灯処理会社さんではないですけれども、やはり、今まで扱っていたところが辞めたりとかっていうことはあるんですよね。需要が減ってくるものはやる必要がない、とか。割れ物ですし、許可も「水銀使用産業廃棄物」と定義されていて別許可になったりすることもあるので、手間がかかるといえば、かかるんです。でも弊社が辞めてしまうと、みんなこれどこに持って行くの?って。

鼓子:そうですね、行き場に困ってしまう。

麻生:ですから、規模縮小というのはもちろんあるかなと思うんですけれども、何とか継続して責任を果たせれば、という思いはあります。

鼓子:「責任を果たす」って、すごく力のある言葉。かっこいいですね。

麻生:始めたからには……一番最初に始めたのは別の会社ですけれども、最後は弊社の方で終われたらいいかなと思っています。

草児:素晴らしいです(拍手)。

麻生:言うのは簡単ですけどね。

鼓子:かっこいい!それを言ってくれる大人がいる!

草児:本当に。赤木先生がおっしゃっていたのは「本当は水俣がそれをしなきゃいけないんだ」って。率先して、というところなのかな、と思いますが。やはり僕らはまだまだ、実際に行って学ばないといけないな、というのが率直な感想です。だから今回も話を持ち帰って、こういう事業者がいるんだっていうことは……。

鼓子:水俣の人にこそ、知って欲しい。

草児:少しずつ広めていきたいな、と。

麻生:昔のことは少しずつ薄まってしまうというか、忘れられてしまう。そういったことはありますもんね。

草児:時の流れには逆らえませんけれども、ただ少しだけでも残るものがあるならば、これをとっかかりにして記憶が蘇るかもしれない。

麻生:そうですね。

草児:そういうことは、ずっと思っております。

>>インタビューは後半戦(@スタジオリライト)へ続きます